Joe Strummer R.I.P.

Staff Diary

8年前のちょうど今頃
ジョーストラマーの訃報をネットで見つけショックを受けたとともに

まさかそんなはずはあるまいと何度も言い聞かせました。
何故なら、そのわずかひと月前にロンドンのアクトンタウンシアターで初めて見た
メスカレーロスのライブでは彼は枯れているどころか、
エネルギーに満ちあふれたパフォーマンスを見せてくれ、
死からはほど遠い世界にいるのを体感したばかりだったからです。
たまたま約一週間ほど訪れていたロンドンで
消防士たちやら地下鉄やらがストライキをしているさなか、
苦労して探し当てた会場はロンドン中心地から少しはなれた、
田舎の公民館、といった風情の建物。こんなところで
本当にクラッシュのジョーが演奏するんだろうか? 
念のため2時間前に乗り込んだ会場、客席への階段を昇りつつ
踊り場で談笑しているグループを
見るともなしに見ると白人数人の中に、あれっ本人?ジョー?ジョー!!
当時独立開業のため、それまでいた職場をやめて無職の状態でのヨーロッパ旅行。
”僕はあなたのおかげで、、、あなたが私の人生を変え、、、”なんて、
かつて何千、何万人が彼に伝えたであろうせりふを
思わず口にしそうになって、こらえました。
ジョーはパンクロックとは 偉大とされている芸術家なんかより
普通の人、それぞれの一個人のほうが貴重で大事で可能性だってあるんだってことを
アートフォームとして表現した世界ではじめてのムーブメントだったと定義していました。
(そしてそのムーブメントに参加できたことを誇りに思うと語っていました。)
いわゆるアーティストとオーディエンスとのピラミッド関係を
ひっくり返す提示をすることに献身したわけです。
”Everybody is a star”スライストーンの歌にもありますが
“Every man &woman is a star.” このフレーズは今回の会場にも
いろんな場所に掲げられており、
ジョーが若かりし頃”俺をスター扱いするな!”と言っていた真意だと思います。
(女性への言及もするあたりの配慮から、一貫性だけでなく成熟も感じました。)
ゆえにいつかジョーとどこかで会ったときには真のクラッシュファンたるもの
サインなんかねだらずに、胸を張って対等に話ができる自分をつくるのが彼に対する
最大の賛辞である、と心に決めていたのですが、
そのときがふいにやって来てしまいました。
しかし少し早すぎました。
『今僕はあなたの影響をうけて日本の東京のまんなか、
渋谷の恵比寿っていうところでBarをやっているんだよ。
東京に来たらぜひ寄ってください。』

そう言えたらどんなによかったろうと思いますが、
Bar Tramがオープンするのはそれから半年後になります。
そして彼の急逝によりその実現は不可能なものとなってしまいました。

消防士たち、仕事でけがをしたりなくなってしまった人や
その遺族たちの待遇改善ために
ノーギャラで引き受けたと思われるそのチャリティーライブはすばらしく、
約20年ぶりにミックジョーンズと初めて(そして最後の)競演をするという
おまけまで付いていました。
その場に居合わせたことを幸運に光栄に思いました。
特にツテがあったわけではないのですが開店後、Jason Mayall氏や
花房浩一氏などジョーの友人であった人たちも飲みに来てくれるようになり、
もし彼が生きていてくれたら
Tramに飲みに来てくれたはずだ、なんていまだによく考えます。
開店以来Tramにはジョーのポートレイトが壁にかざってあり、入り口には
ロンドンコーリングのアナログレコードが6年近く掛けてあります。

演奏する場がないなら嘆いていないで自分でつくれ、
遊び場がないなら自分でつくれ、
仕事がないなら自分で作り出せ、
といったメッセージを真に受けてはじまってしまったのが
僕のキャリアであり、Bar Tramでもあります。

常識やシナリオ、押し付けられたやり方ではなくても
自分の人生を輝かせることはできるはずだ、ということをBarや
そのありかたを通して表現、証明したいという気持ちも原動力になっています。
ずっと通って来ていただいてる方々は意識的にせよ無意識的にせよ
きっと感覚的にメッセージを受け取っていただいているのではないかとおもいます。
今年もまた12月22日の命日からここ数日間は彼の声を聞きながら感謝をこめて、
アブサンではなくテキーラをあおることにします。
Cheers, Thank you, Joe Strummer!!
Bar Tram & Bar Trench (I)

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